自作キーボードとクセをすり合わせる話

この記事は自作キーボード Advent Calendar 2017の4日目です。前日は、@mt_mukko さんの「Nyquistを組み立てた話。Pro Microもげもあるよ!」でした(この記事は ThinkPad T460s で書いてます)。

Let's Split を組み立てた

@matsPod さんの Group Buy に参加して Let's Split のパーツを購入したものの、転職やら何やらでバタバタしていてようやく組み上げたのが 10 月…。

現在は職場で活躍中。机の上を広く使えるのがいい感じ。

キー配列の調整

さて、上のツイートに謎のポストイットが写っているが、これは使っている最中に気付いた点をメモっているものだ。これを元にしてキー配列をどう変更するか考えたりしている。言うまでもなく、自作キーボードの魅力の一つは自分の好みに合わせてキー配列を自由に設定できること。

現在は、以下のような配列にしている。記号の位置についてはまだまだ調整を続けているし、Lower/Raise と無変換/変換のデュアルキー化がうまく設定できてないなど課題が多いものの、ひとまず日常業務で支障のない程度には仕上がった。

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最初のツイートと見比べてもらうと分かると思うが、初期配列からそこまで大きな変更はしていない。QWERTY 配列そのものとか、Ctrl や Alt などの修飾キーの位置は、昔から愛用している HHKB に合わせるようにしている。

最も頻繁に変更しているのは、Lower/Raise と組み合わせる記号キーだ。Let's Split が 40% キーボードである以上、これらのキーをどこかに押し込む必要があるが、どこでもいいというわけではない。自分がプログラミングや日本語入力をする上で頻出するキータイプの順番というものがあるので、その流れに沿ってタイプしやすい配置を探す必要がある。

面白いのは、単純に頻出するキー同士を近くに置けば良いというものではないらしい、ということだ。経験的には、右手と左手を交互に動かしたり、手首の回転を使うような動きは安定感が高い。

こうして、キーを通常とは別の場所に設定していると「あのキーはどこに置いたっけ」となることが、まぁ…稀によくある(笑。この点については、上の写真を見てもらうと分かるように、キーキャップをアルファベットではなく Lower/Raise レイヤーの記号に対応したものにして解決している。一見すると奇妙に感じると思うが、どの道、アルファベットはブラインドタッチしているのであまり問題がないという寸法。

他にも、Lower/Raise は他のキーとは別形状のキーキャップを持ってきて角度を付けることで、親指で探りやすいようにしている。

キーボードと自分のクセをすり合わせる

上の写真を見て、わりと保守的なキー配列だなと思った人も多いと思う。これは Let's Split を使っているからといって他のキーボードを使う機会が無くなるわけではない、という単純な理由による。僕がキーボードを自作しているのは、身体への負担を減らして効率的に作業をするためなので、一般的でないキー配列を採用して効率を下げては元も子もないし。

一方で、多少のキー配置の変更は慣れで何とかなる部分も大きい。僕の場合、記号の位置は一週間か二週間もすれば体が覚えてしまうし、そこで他のキーボードに一時的にスイッチしても問題なく扱える。

自作キーボードに対するよくある懸念として、標準的でないキー配列ではまともにタイプできないのではないか、というものがある。僕は、自分の経験を通じて人間の適応性は自分自身で思っている以上に高いのでそこまで心配する必要はない、と考えるようになった。キー配置の変更、というのは市販キーボードでも論争のタネになりがちなテーマだが、この点を過大に見積もって新しい可能性に手を出さないのは人生の損失…というのは言い過ぎだろうか。

このように、自作キーボードには「自分のクセをキーボードに合わせる」方向と「キーボードを自分のクセ(習慣)に合わせる」方向の、二つの方向性があるように思う。

これは、どちらかが正しいという話ではない。二つの相反する要求のバランスを取っていく中で、自分が無意識のうちに従っていた習慣を一つ一つ発見し、何を守りどこで殻を破っていくか考えていくのが、自作キーボードという趣味の一つの醍醐味だろう。

これは、万人にとっての〈理想のキー配列〉は存在しない、ということでもある。キーボードと自分のクセをすり合わせていく際に、使ってみて課題を発見して修正する、というプロセスを回していくと、個々のキー配列はその時点での自分に合ったものでしかない、ということになるからだ。

このことは、自作キーボードの普及を考える上で悩ましいポイントではある。キー配列を編集する GUI エディタのようなものはすでにあるが、日本語で使うキーに十分に対応していないものも多い。その辺はコミュニティで解決していくべき課題なのかもしれない。